銀行融資に関して中小企業金融円滑化法、つまり『中小企業には多少無理でも潤沢に資金供給をせよ』という法律が2013年3月31日に期限切れになりました。その結果、2013年6月末88万社もの「融資返済計画のリスケ先」をその後は「中小企業経営力強化支援法」に引き継がれ、中小企業(経営者)の経営力の強化が求められています。このメニューでは、銀行融資を受けるに当り、銀行融資の「貸し手」銀行の考えを理解した上で、債務者「借り手」の正常な銀行融資と、事業の継続が続けるための情報を纏めます。

I  銀行の与信規定
 銀行融資は「信用格付」に始まり、「信用格付」に終ると云われています。
 銀行内規である与信規定には、その信用格付に応じて、与信の限度、与信の許容範囲が細かく制限規定されています。
 主な規定領域は、次のようなものです。
    ・総与信額
    
・決裁権限(支店長決裁額は、概ね1,500万円迄。それを超えると本部決済となる)
    ・無担保
許容額(所謂「裸融資」の許容額)
    ・契約に基づく銀行融資額の返済方法
    ・クレジットコスト(信用格付が下がると倒産確率が上がる。すると、調達資金の金利が上がる)


Ⅱ 「実質自己資本とキャッシュフロー」と「銀行融資先の信用格付」の関係
 実質の自己資本(B/S)が+/-、実質のキャッシュフロー(P/L)が+/-により、金融庁基準の信用格付けは次のとおり大きくは4つに分類できる













Ⅲ  銀行の貸倒引当率
 銀行は、貸出先(債務者)の銀行融資の残高に応じて、貸倒リスクに対する貸倒引当金(負債性)を、設定しなければなりません。それは貸倒引当損(会計上の費用。しかし税法上の損金にはならない)の計上義務を意味します。銀行融資の借り手(債務者)の信用格付が低くて、会計上の費用が増えると、税金が安くならず、且つ銀行の財務諸表上、貸借対照表の負債が増え(財政状態が悪くなる)、損益計算書の費用が増えて収益表示が悪くなります。また税金も安くならないので貸借対照表上の未処分利益が税額引当分が減額して表示されます。銀行にとって、貸倒引当の増加は「良いことなし」なのです。

 昔、巨大スーパーが潰れる前、そのスーパーD某社への融資を「正常先」としていたU某銀行が、金融庁検査で、引当率5%から一気にそのD某スーパー全額融資分について100%になり、一気にU某銀行の破綻で潰れたエピソードがあります。

 銀行には、「不良債権率=不良債権÷全貸出し額×100%」の管理があり、メガ銀行で2%以内となっています。またBIS規制により、自己資本比率では国内取引銀行4%基準、国際取引銀行8%基準のがあります。早期是正措置が働くと銀行経営の根幹が揺るぎかねない厳しい状況に追いやられます。
  債務者区分
(金融庁基準の信用格付)
信用格付 
(行内規定の信用格付)
銀行の貸倒引当率(目安)(有税) 債務の種類 
(正常債権・ 不良債権)
  区分の内容    銀行の融資態度(スタンス) 
 正常先 A
B
C
D
E
F
 0~3% 正常債権  債務履行に問題のない企業。6区分ほどに分けられ、ランクが下がるほど融資条件は悪くなる  積極的
要注意先     その他の要注意先 G
H
I
J
K
 5~8%  業績低調、又は不安定。財務内容に問題があり注意が必要  保証協会保証あれば融資は可能
 要管理先 L
M
N
O
 30%  不良債権 
(銀行法上の開示債権)  
 要注意先の中でも、貸出条件、債務履行に問題がある  回収方針
但し銀行が承諾した事業改善計画書を出せば「追加融資」「新規融資」が可能。
事業計画書は所謂「合実計画」(合理的で達成可能性が高い計画のこと)。暫定リスケは3年以内(つまり猶予は計画前3年)。
定期的(月次・年次)の銀行モニタリング(目的達成管理)がある。達成率管理基準は前回比80%

 破綻懸念先
 (ハケン先)
P
Q
R
S
T
 50%~70%  経営難の状況。経営破綻に陥る可能性あり  対象外
但し銀行が承諾した事業改善計画書(合実計画)を出せば「追加融資」「新規融資」が可能。暫定リスケは3年以内(つまり猶予は計画前3年)。
定期的(月次・年次)の銀行モニタリング(目的達成管理)がある。
[注]事業計画は、底堅い(合実)ものが要求され、毎回の検査で達成率80%基準は困難

 実質破綻先
 (ジッパ先)
U
V
W
x
 100%  深刻な経営難の状況。再建見通しが立たない等、経営破綻に陥る可能性が高い  対象外
但し銀行が承諾した事業改善計画書を出せば「追加融資」「新規融資」が可能
定期的(月次・年次)の銀行モニタリング(目的達成管理)がある。
]抜本的な窮境脱出策があれば別ですが、通常は毎回の検査で達成率80%基準は極めて困難

 破綻先 Y
Z
 100%
 法的・形式的な経営破綻の状況にある

 対象外


Ⅳ  信用格付と債務者区分
 債務者区分とは金融庁検査マニュアルにある金融庁基準の銀行融資に関する信用格付「債務者区分」を指します。
 信用格付とは、その債務者区分に準拠して、その区分を更に細分化して、銀行融資の回収に関して信用管理をしています。
 その細分化した銀行内規による債務者の信用区分を、銀行内の用語としては「信用格付」と呼んでいます。
 
 その
信用格付と債務者区分により、銀行内では銀行融資スタンスが違います。特に正常先と不良債権先では尚更です。
 図式化すると下図チャートのようになります。
















































    実態B/S
  ←自己資本(-) |  自己資本(+) → 


   ↑(+)

 
実態P/L

   ↓(-)
 

 破綻懸念先
B/S (-) ・ P/L (+)
 
正常先
B/S (+) ・ P/L (+) 

実質破綻先
B/S (-) ・ P/L (-)

     要注意先
B/S (+) ・ P/L (-)



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金融庁基準の信用格付『債務者区分』と、融資貸出の銀行内規の関係説を、詳しく図解します(本文中、第Ⅳ項)。

銀行融資は、銀行では、貸出先債務者の「信用格付」に始まり「格付」に終ると云われるほど重要な関心事です。
銀行融資の信用格付
        銀行融資の話
 中小企業金融円滑化法(平成25年3月末迄)の期限切れで、同年6月末の融資リスケ先が88万社に上りました。そのうち「踏み倒し」予備軍)が80%(70万社)と見込まれています。

【政府の方針】
 中小企業には「金融緩和」を続けます。
 3~5年での不良債権の整理予定を10~20
 年に変更します。


【融資先の義務】
 社長は自社の「財務状況」を、自分で銀行
 融資担当に説明して下さい
 銀行融資の不良貸出先については、
 『事業計画書』を出し、毎年(毎月)の銀行
 モニタリングにパスして下さい。
 銀行融資の不良貸出先については、事業計
 画書が作成できない者は、1~3年の猶予で底
 堅い事業計画書を作る体制整備をして下さい。
  その1~3年は「暫定リスケを認めますが、
 暫定的な「経営改善計画」は出して、毎年(
 毎月)銀行モニタリングにパスして下さい。

【銀行の立場】
  上記の諸規則の遵守を前提に、銀行判断で、
 債務超過企業にも融資をします
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 ・銀行融資の諸ルール総論
 信用格付
 1.銀行の与信規定
 2.実質資本・資金収支と「格付」の関係
 3.銀行の「融資先」に応じた貸倒引当率
 4.信用格付と債務者区分の関係
 
 金融庁認定支援機関の役割
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